子ども・若者支援に思うことコラム

『追い詰められているこどもの心の回復を図るには』
〜養育支援訪問事業の全国調査―インタビュー調査から〜

更新:2024年4月16日 寺出壽美子

 こどもの自殺者数の増加、親に隠れての自傷行為の増加、オーバードーズの増加と、今、日本のこどもの生きづらさは極限状態です。さらに、気分変調の母親が激増しています(1996年うつ等気分障害者43万人が2008年104万人)。母親のうつ状態や怒りの爆発は日常生活の中でこどもの精神を蝕み生きる意欲を喪失させています。
 今、これら心理的虐待下にあるこどもを守ることは急務であると考えます。昨年の心理的虐待件数は12万9千件あり、親が気づけない中でのこどもへの心理的影響は大きく(複雑性PTSD)、過剰なストレスで脳の発達への影響も心配されています。こどもは家庭以外の生活の場の選択肢がありませんから、渦中のこどもを受けとめて不安や孤独から解放してくれる誰か大人との出会いが必要です。
 今回のインタビュー調査と一昨年の東京都養育支援訪問事業のインタビュー調査の中で、育児・家事の訪問支援者がこどもと出会い関わることで少しずつ生きていく力を蓄え、高校生年齢から社会生活に復帰した事例を幾つも知ることができました。

 4月から子育て世帯訪問支援事業が開始されます。訪問支援者が数年間こどもに寄り添い受けとめることで、こども時代のうちに少しずつ心の回復を獲得できれば、成人してから落ち着いた人生を送ることができるでしょう。反対に不安と孤独な状態で誰からも受けとめられずに放置されていたら、薬物・ギャンブル等に依存して生活保護受給生活を余儀なくされるかもしれないのです。
 4月からの子育て世帯訪問支援事業が機能するためには、こども家庭庁の先導で、今迄は母親支援中心の支援内容だったものを、今後はこどもの心の回復を目指す支援内容に改めていくことだと思います。
 尚、こども時代に心理的虐待等を受けた結果、増加している不安定な母親に対しては、今迄の養育支援の母親支援プログラムから別事業のプログラムによって母親の心の回復を図っていくことも同時に進める必要があります。
 今、こども家庭庁に求められていることは、こどもの心の回復は子育て世帯訪問支援事業プログラムで時間を掛けて進めて行き、母親の心の回復については別プログラム(ミーティング・治療等)に変更して、新たに開始していくことではないかと考えています。