子ども・若者支援に思うことコラム

少年法と若年受刑者処遇を考える〜少年法を25歳まで引き上げる〜

更新:2019年12月27日 寺出壽美子

 2019年11月7日、少年法適用年齢引下げに反対する院内集会が参議院会館で開かれました。夏の院内集会の時よりも、少年法適用年齢の引き下げには多くの問題が内包されているとの認識が議員の方々に浸透されて来たと感じています。3年ほど継続して来た法制審議会の議論は現在大詰めを迎えており、日本弁護士連合会・日本児童青年精神医学会・日本子ども虐待防止学会等や、刑事法の研究者・家裁元調査官[292名]だけでなく、法務省のお膝元の元少年院院長[87名]までもが反対声明を出すという展開を迎えています。

 私は、秋から法務省矯正局の若年受刑者処遇を検討する8名の委員のひとりとして勉強会に参加して来ました。26歳未満の若年受刑者処遇を考える中で、若年受刑者処遇に関しても、私は現在施行されている少年法を適用することが最善ではないかとの結論に至りました。以下、結論に至った理由を列記したいと思います。

◆最近の脳神経科学では、身体は12〜13歳で成熟し、知的には18歳で成熟するけれども、計画や制御する脳の高度な機能、即ち社会的・情緒的に成熟するには25歳まで掛かるとの知見が発表されています。従って、衝動的な行動の制御ができるようになるには25歳まで掛かることが判明したわけです。

◆この脳神経科学の知見を受けて諸外国の司法は国によって様々ではありますが、一般司法の刑事裁判においても少年司法においても、18歳から21歳に対しては特別な手続きを行っている国が多くなっているそうです。さらに新たな知見に基づいて欧州では、今日、25歳までその年齢を引き上げて行く動きにあると聞いています。オランダは、既に2014年に23歳まで少年司法を拡大したとのことです。
 
◆日本では児童虐待数が激増している中、少年院の少年の60.1%が虐待を受けているとの調査があります。女子だけですと、70%が虐待を受けています。親は、実母のみのひとり親家庭が1位40.2%と、貧困とも連動していることが分かります。現在、大学進学率が50%を超える中、少年院の少年は中卒と高校中退者が1位66.2%です。このような背景の中、非行発生件数は、1981年から1/5に減少し、重大犯罪件数もピーク時から83.8%も激減しています。
 これは、日本の少年司法、即ち少年法に基づく現行制度(家裁への全件送致主義、調査官・鑑別技官による調査・判定と審判、少年院の矯正教育、保護観察)が、うまく機能しているからだと考えます。少年院の少年は約半数が18・19歳です。2016年少年院出院者の4年内、再入院率は12%。2016年若年受刑者(26歳未満)の4年内刑務所再入率は30%で、少年院の少年の再犯率は若年受刑者の1/2以下です。
 私は、1990年代から少年事件の少年の立ち直り支援の現場にいますので、試験観察中の少年に対して、少年の立ち直りのために私とも密に連絡を取り合いながら終局審判まで奔走している調査官と何人も出会っています。また、少年院内において担当教官は面接・作文指導にあたり、日記は寮の当直教官が毎日コメントを添えて少年に返却しています。少年院を出たある少年は、「あの教官と出会えたことで、自分自身の生き方が変わった。」と。また別の少年は、「最近になって気がついたことだけれど、初めは面倒だなと思っていた作文と面接で、僕は苦手だった考える力と気持ちを言語化する力を身につけることができた。」と、話してくれました。日本の少年司法は、たゆまぬ現場の方々の努力によって世界でも注目にあたいする少年事件の激減率を達成しているのだと思います。

◆児童虐待下で育った子どもは内部に存在感覚が根づいていないため、関係が壊れている親子は親子関係の修復をはかる必要があります(既に親が不在、または虐待の親が変わりようがない時には、新たな大人との出会いと受けとめられる体験が必要)。児童虐待、いじめ、そして発達障碍への無理解等を背景として少年事件は引き起こされています。少年が逮捕されたその時を捉えて閉ざされた空間・時間の中で、少年はおのれに向き合い、親子はお互い考え続けて、親子関係の修復を進めて行くことが重要です。少年院の1年間は貴重な時間・空間であり、この親子関係の修復を実現することが少年にとってのその後の人生の基盤となって行きます。私は、少年院内の少年と親との関係修復の仲立ちのお手伝いをこの間、何組もして来ました。この現行の少年司法を若者(26歳未満の若年者)にまで拡大していくことが、日本の若者の人生にとって最重要なことであると、今、私は考えています。今まで関わって来た立ち直り支援の中で、親子関係の修復が出来た若者は再び事件を起こしていないからです。

 教育的関わりは大切なことではありますが、教育的な関わりが本人の内部にストンと落ちるにはその前段階において、誰かが受けとめてくれてその人と信頼関係が築かれ、その結果、存在感覚が基底に根づくことが必要です。存在感覚が根づいた若者は教育的関わりを受け入れることが可能となりますが、受けとめられるという体験がなく存在感覚が内部に根づいていない者は教育につながることも難しいのです。

 以上、現在うまく機能している少年法を25歳まで引き上げることが日本の若者のその後の人生を保障することとなり、結果として犯罪を減らすことにもつながりますので、是非少年法を18歳に引下げるのではなく25歳まで引き上げる法制度改革を実現させていってほしいと願っています。